第21話(3) 茜色の小公爵様

9/9
前へ
/320ページ
次へ
「んむっ!?」  私の唇は突然に奪われた。  甘噛みするようなキスをして、その後に味わうように私の唇を舐める。満足したのかそっと唇を離したシモン様は真っ赤な顔で狼狽える私を切なそうな表情で見下ろしていた。私は息も絶え絶えに切らしながら、茜色に染まる小公爵様を見上げる。  お、おさけ、おさけ、おさけがシモンさまをくるわせている…。私の頭の中はもうオーバーヒート寸前だ。  茜色のシモン様はとても妖艶で、混乱しながらも私は彼に見惚れた。  なんて綺麗な人なんだろう…。  いつも朗らかに笑う小公爵様は今いない。いつまでも弟のようだと思っていたのに、目の前には『男性』を意識せざるを得ない年下の男の子、ただ一人。 「…ソフィから煙草の匂いがする」  ゼノの煙草の匂いが残っていたのか…少しだけ顔を歪めて不機嫌そうにするそんな仕草に、私は勘違いしそうになる。  もしかしてシモン様は…私を…。そんな筈ない、そんなことあり得ないのに。期待、させないで欲しい…。  再びシモン様のお顔が近付いてくる。煙草の匂いなんて、シモン様とアルコールの匂いに掻き消された。  シモン様、貴方は今おかしくなってる。 「君に似合わない。やめろよ、そんな男」  それはきっと、お酒のせい…よね?
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加