第21話(4) 酒は飲めども…(以下略

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「え? 毎朝ミソシルを作ってくれる人と結婚…」 「ちがう、もっと前」 「シジミのミソシルは二日酔いに効くらしく…」 「そうじゃなくて」 「ソフィからの差し入れです」 「それだ!!」  私は半ば叫ぶ形で声をあげた。 「シモン様? どうなさったのですか?」  私の様子に呆気に取られたリチャードは、ポカンとした顔で私を見つめている。主人として取り乱した姿を見せるなど…だが、今の私はそんなこと、どうでも良かった! 「ソフィがこの屋敷に来ているのかい!?」 「あ、はい。昨日の夕方に、シャロンお嬢様とレオン様と共にこちらに帰ってきております」  昨日から!? それに、私が二日酔いと知って『シジミのミソシル』を差し入れ…。  な、なんということだ! 「……もしかして、」  私の心臓が痛いほどに鐘を鳴らしている。私は思わず頭をかかえてしまった。  夢の中で会った彼女の姿、声、匂い、感触、温かさ…あれらが全て… 「…夢じゃなかったとしたら…」  私は…私は、なんということを!!!  自分が紳士から大きく外れた行動をしたことに強く後悔した後、この先ソフィとどんな顔で顔を合わせていけばいいのか分からずに混乱した。  ソフィは私のことを軽蔑したに違いない。きっと今までみたいに接してくれるわけない、私はソフィに嫌われたのだろう…!  大きな絶望感が私を飲み込んでいく。だが、それだけじゃなかった。  絶望感の中に、期待感があったのだ。  もしかしたらソフィも、私を受け入れてくれるかもしれない…。そして何より、ソフィに触れられた事実が、純粋に嬉しかった。 「…私はなんて浅ましい…」  リチャードによれば、ソフィはシャロン達と共に朝早くにスクールタウンへ戻って行ったらしい。  これは時間をかけてはいけない問題だろう。時間が重なれば重なるほどに、顔を合わせずらくなるに違いない。  誠心誠意、謝らなくては。
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