第22話(1) 悪役令嬢シャロン

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第22話(1) 悪役令嬢シャロン

 最後の授業を終えた私は慌ててベラドンナ先生が教室から出て行く前に声をかけた。星読み授業の先生で、今しがた講義を受けたのだが分からない部分があり質問したかったからだ。 「ベラドンナ先生。すみません、質問が…」 「あら、シャロンさん。貴女はいつも私の授業を熱心に聞いてくれているから、先生も嬉しいわ」  ベラドンナ先生はニコリと上品に微笑んでこちらを振り返った。そして、「あら?」と何かに気付いた顔をする。 「シャロンさん、貴女の制服のポケットから何か落ちましてよ」 「え?」  私も釣られて、ベラドンナ先生の視線を辿るとそこには見慣れない四つ折りの紙切れが落ちていた。なんだろう? と首を傾げながらそれを拾い、開いて中身を確認する。ベラドンナ先生も興味津々な様子で一緒に覗き込んでいた。 『シャロン様、指示通りにリリス・スイートラバーの私物を盗んで参りました』 「…なにこれ…」  私は呆気に取られて、身に覚えのないメモ内容に目をパチクリとさせる。 「…シャロンさん!」  ベラドンナ先生の声にハッとした。私が先生に振り返ると、先生は不安そうな顔をして私を見つめている。 「このメモの内容は、どういうことかしら…?」 「私にもよく分かりません…」  私の返答に先生は困った顔をした。けれど私にはそう答えることしか出来ない。本当に分からないのだから。 「…申し訳ないけれど、貴女の荷物を確認させて貰えるかしら? 貴女を信じていない訳ではないけれど、立場上…確認しなくてはならないの」 「は、はい。もちろんです…!」  私はすぐさま頷いた。ベラドンナ先生もホッとした顔をして頷く。私はとても嫌な予感がしていた。メモの内容にリリス嬢の名前を見つけたからかもしれない。リリス嬢が悪戯にこんなメモを用意した…?  何はともあれ、私の無実を確認して貰わなくては。指示してもいないし身に覚えもない。やってもいないことに、証拠なんて出てくる筈ないのだから。 「…シャロンさん、もう一度お尋ねします。これはどういうことなの?」  ベラドンナ先生の厳しい声。私は頭が真っ白になっていた。私には分からない、分からないわ…。  何が起こっているというの?  私は青褪めた顔で、私の鞄から出てきた壊れたロケットペンダントや破かれたノートを見つめることしか出来なかった。  ノートにはリリス嬢の名前が、ロケットペンダントにはイーサン殿下とリリス嬢が笑顔で写った写真が。  それは明らかにリリス嬢の私物だった。
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