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「あーーー!!!!」
先生に疑いの目を向けられて、クラスメイト達からはヒソヒソと何やら囁かれている中、場違いな程大きな声が教室内に響く。
「やっと本性を現したわね!!」
見ればそこには違うクラスのリリス嬢の姿。
「私の物が無くなっていたからもしかしてと思ったけれど…やっぱり貴女だったのね!」
ズンズンと大股にこちらへやって来たリリス嬢は、何が楽しいのかニンマリと笑っている。ところがズタズタに引き裂かれたノートや壊れたロケットペンダントを見ると様子は一変。その大きな瞳に涙を溜めて、小刻みに肩を震わせた。
「ひどい…授業ノートはもう読めないほどに引き裂かれているし、このペンダントはイーサンくんがくれたとても大切なものなのに…!」
リリス嬢の変わりように驚き圧倒されていた私だったが、後ろの方でクラスメイトが「やっぱりシャロン様はイーサン王子とリリス嬢の関係を根に持っていたんだな…」といった囁き声が聞こえてきたので、呆気に取られてはいけないと気を引き締めた。
「違います、私ではありません! 私にはこのメモの内容に身に覚えがありません!」
違うのだと、意思表示しなくてはと思った。今ここにはいつも味方をしてくれるソフィもいないし、レオンやエリック様、ルーカス様もいない…私一人だ。一人でこの状況と戦わなくてはいけない!
「…貴女はこんな時も嘘をつくのね…」
しおらしく涙ぐむリリス嬢を睨むと、彼女はとても怯えた表情で「きゃっ…」と叫んだ。…反論の意を込めてリリス嬢を睨んだが、もしかしたら逆効果だったのかもしれない。
私のリリス嬢への態度に先生やクラスメイトの疑惑の目が深くなり、どうしたら信じて貰えるのだろうと私の方こそ泣きたくなった。
「…ベラドンナ先生」
そこに声をかけてきたのは、同じクラスメイトのラザーク様だった。
「シャロン嬢の言い分にも耳を傾けてあげてください。もしかしたら、誰かの悪質な悪戯かもしれません」
私はラザーク様の言葉に驚いた。イーサン殿下が留学に行ってからというもの、元々そんなに話す間柄ではなかったが、明らかに彼から避けられていたからだ。まさか、ラザーク様が味方をしてくれるとは思ってもみなかった。
ベラドンナ先生も反省しているような暗い表情で、ラザーク様の言葉に頷いた。
「そ、そうね…シャロンさん、疑ってごめんなさいね。この件は担任の先生も交えてよく調べてから…」
「待ってください!」
先生の言葉を遮って放たれた待ったの言葉。また新たな登場人物に、私は狼狽えることしか出来なかった。
「そのメモを書いたのは私です! 私は確かに、シャロン・ナイトベル公爵令嬢にリリス嬢の私物を盗んでくるよう指示されました!」
そう叫び立つのは、マシャーク伯爵令嬢だった。
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