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「マシャーク伯爵令嬢…?」
私は信じられない気持ちでマシャーク伯爵令嬢を見た。彼女は決して私と目を合わせずに、どこか怯えたような表情をしていた。
ついに確固たる証言者の登場で、教室内の雰囲気は一気に私を敵対視するものとなる。
「わ、私は…シャロン様に脅されましたっ…私がリリス嬢と友人なのをいいことに、私を脅し命令されました!」
「なにを言っているの…?」
訳が分からない。貴女とお話したのは、夏に騎士科エリアでお話した以来なのよ?
「…シャロン嬢、本当ですか?」
顔を顰めてラザーク様が尋ねてきた。私は首を横に振り、そんな事はしていないと主張する。
「違う、違うわ! 私はそんなことしていません! マシャーク伯爵令嬢が嘘をついていますっ…脅したと申しますけれど、私が貴女に何と言って脅したのか、今ここで仰ってくださいな!」
私の反撃にマシャーク伯爵令嬢はわあっ、と泣き声をあげて「あのような卑劣な内容を、私の口から申せとおっしゃるのですか?」と叫んだ。ベラドンナ先生やクラスメイトは涙するリリス嬢やマシャーク伯爵令嬢に感化され、私に対し鋭い眼差しを向ける。
「一体何と言って脅したんだ?」
「あのナイトベル公爵家のご令嬢に脅されて、逆らえる者はいないだろうよ…」
「シャロン様の最近は雰囲気が柔らかくなって憧れてすらいたのに…やはり冷酷な性格はお変わりないようですね、残念です」
「あの公爵令嬢様でも嫉妬に狂うんだ、女って怖いな」
「でもシャロン様は今、騎士科の例の人と交際なさっているだろう?」
「公爵令嬢が平民を本気で相手にする筈ないだろう? 結局はイーサン殿下に捨てられた心の穴を埋めていただけなんだろう」
「お二人の恋愛、応援していたのに…人の心をなんだと思ってるの、酷いお方」
みな口々に言う。先程まで声を潜めて遠慮がちに囁いていたクラスメイトたちは、今では私に聞こえるのもお構いなしの声量であった。
「…シャロンさん。私と一緒に職員室に来なさい。そのメモと、引き裂かれたノートや壊れたペンダント、そして証言まであるのです。先生の言っている意味、分かりますね?」
ここで反抗すれば更に立場は悪くなるのだろう。私は頷くしかなかった。
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