第22話(1) 悪役令嬢シャロン

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「ナイトベル公爵家ともあろう者が…堕ちたな」  誰かが言った。私はすぐさま声のした方に顔を向けたが誰とも目は合わなかった。悔しい、悔しい! やってもいない事に、何故責められなければいけないの…! 「…皆さまの、私への中傷は全て聞こえています。けれど今回のことに身に覚えはありません、必ず無実を証明してみせますから」  私はギロリと周りを見渡して、クラスメイトたちを見渡した。リリス嬢が勝ち誇ったような表情をしている。悔しくて涙が出る。でも、そんな姿を見せても笑いの種にされるだけだ。絶対に見せたくなかった。 「そして私が愛しているのはレオンだけです。これだけは譲れません…公爵令嬢の遊びだと侮辱されたこと、絶対に忘れませんよ」  悔しさから歪めていた表情にポロリと一粒だけ涙がこぼれ落ちる。私の言葉にクラスメイトたちは顔を青くして、もう誰も囁く者などいなかった。  「行きますよ、シャロンさん」とベラドンナ先生に強い口調で言われ、私は素直に先生の後に続いた。  私がリリス嬢の隣を通り過ぎる時に、先程まで弱々しく泣いていたはずの彼女がニンマリ笑って私だけに聞こえる小声で囁く。 「はい、『悪役令嬢』の出来上がり」  私はその時、既視感を感じた。『悪役令嬢』なんて言葉を使うのは、『転生者』であるソフィだけだった。 「…リリス嬢、あなた…」  私が言いかけたところで、ベラドンナ先生が急かしてきたので名残惜しいが私はそのまま教室を後にする。  青褪めるクラスメイトの中で、ラザーク様だけが無表情に私とリリス嬢を見つめていたこと、私はちっとも気が付かなかった。
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