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シャロン嬢、か…。初めて令嬢を目にしたのは、イーサンが8の年に大々的に開催したお茶会に参加していた事がきっかけだ。
私が王子の頃に想いを寄せていた伯爵令嬢を当時ナイトベル小公爵だったクロードに奪われるという苦い思い出があるのだが…あの男の娘とは言え、愛らしいエリアーナの娘でもあるのだから、さぞエリアーナに似て可憐で愛らしく美しい娘なのだろうと期待していた。そんな私は、令嬢をひと目見てとても驚いた。
イーサンのひとつ下の年であると言うのに、大人びており…支配階級者然とした、すました表情がとても印象的な娘。その表情もそうだが、顔立ちはあの気に入らないクロードの幼い頃にそっくりだったのだ。
申し分のない美しい娘ではあるのだが、エリアーナを思い出させる要素を見つけられない令嬢に期待が大きかったぶん落胆も大きく、しかし優秀なあの男の姿と重なる堂々とした佇まいぶりにひどく感心した事を覚えている。
たぶんその時に、シャロンをイーサンの妃に、と考えはじめたのだと思う。もちろん、私のそのような思惑とは別に政治的理由などもあり晴れてイーサンとシャロンは婚約を結んだのだが…。
私としては、未来の国母はシャロン以外にはいないと断言する。王としても父としても、イーサンにとってシャロン以上の女性はいないように思うのだ。
だからこそ、今回のこの件は穏便に済ませなくては。もしナイトベル公爵が条件を提示してきたら、ある程度の条件は呑んでやることにしよう。
「…そろそろあの男の元へ向かうとするか」
私は渋々と思い腰を上げて、頷く筆頭執事を従え執務室を後にした。
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