83人が本棚に入れています
本棚に追加
「未来の国母としての自覚が足りない、ですか…。確かに私は娘に甘いところがありますからね。父親として出来る限り娘の願いは叶えたい。今回このような場を申し出たのも娘に泣きつかれたからだと思われるのかもしれませんね」
「分かっているのなら…」
「しかし。陛下は勘違いしていらっしゃる。最初に申し上げた筈です、『ナイトベル公爵家は』と。何も父親として婚約破棄についてお話しているのではありません。ナイトベル公爵家当主としてお話しているのです」
「な、なにを…!」
ますます理解できない! ナイトベル公爵家当主としてだと? 尚更、この婚約が簡単に白紙に戻せない事くらい分かっている筈だ!
憤慨する私を見据えていたクロードは、静かに自身の胸ポケットから何かを取り出して、ローテーブルの上に…私の目の前に差し出してきた。
「自覚が足りないのは、イーサン王太子にも言えることなのでは?」
そう言って、フッと冷たくも美しい微笑を浮かべたクロードを見て、私はゆっくりと差し出された何かに視線を落とす。
「…!」
最初のコメントを投稿しよう!