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それは一枚の写真であった。我が息子イーサンと、見知らぬ令嬢が乱れた姿で重なりあっている…。
「な、なんだ!これは!?」
悲鳴にも近い大声をあげる。『不義密通』。脳裏にそのような単語が過った。
「昨日、私の娘が遭遇したイーサン王太子の密会場面です」
私は頭を抱えた。昨日息子らから聞いた話では子爵令嬢との密会をシャロンに見られてしまったのだと…それがこんな、睦事な密会だとは…。イーサンはおろか、ハリスらからもそのような事は一言も……いや、王太子の睦事な密会についてなど、言うのも憚られる、か。とにかく…。
これでは話が変わってくるぞ、イーサン!
王は確かに側室を迎える場合もある。しかし、物事には順序と言うものがあるのだ。
婚姻し、正妃との間に子を設けたのち、より多くの血筋を残すために側室を迎えるという場合。または正妃との間に子を望めずに側室を迎えるという場合。
それが、このような…婚姻すら交わしていない身でありながら、国にとって尊ぶ身体だと言う自覚も持たずに、こんな、こんな…どこの馬の骨とも分からない女と乳繰りあっていただと!?
シャロンという婚約者がありながら、他の女性と体を重ねると言う愚行。仮に、婚約中に他の令嬢と子を成してしまうなんて事になれば…王太子自らがシャロンを王太子姫として認めていないと言うことになるのだ。それはシャロンを侮辱している行為となる。シャロンを…そして、ナイトベル公爵家を。
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