第4話(2) 陛下 VS 公爵

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 なるほど、『公爵家当主として』と言うクロードの発言に納得がいった。 「わ、我が息子が…そなたの、娘の心を深く傷付けてしまった事は想像に容易く…」  息子への怒りと、混乱とで頭の中がぐちゃぐちゃになりながらも何とか言葉を繋ぐ。シャロンをイーサンの妃に。諦めるわけにはいかないのだ。 「だが、しかし…国のため…そなたの忠義にも…」 「そう、我々ナイトベル公爵家は建国時から国を王を忠臣として支えて参りました。それがどうです? イーサン殿下は娘を…ナイトベル公爵家を侮辱したも同然の行いをなさったのです。…我々の忠義を裏切ったのですよ」 「…く、クロード…いや、ナイトベル公爵…我が息子が申し訳なかった。この通りだ」  私が頭を下げると、クロードは「陛下。私のような臣下に頭を下げないでください」と冷たく言った。 「……婚約破棄の件、考え直してはくれないか…?」  顔色を伺うように見上げる私の言葉を聞き、クロードは笑みを深める。 「…私はこの度、国の行く末を憂いる臣下のひとりとして陛下にご相談をさせて頂いたまでです。ですが、陛下がこれからどのようなご決断をされるのかは存じませんが、我々との考えに沿わないものであるのならば、正式に婚約破棄の申し入れを行うつもりです」  この写真を持って、とクロードはそう締めくくった。  つまり、クロードは私自ら婚約破棄を命じろと言っているのだ。ナイトベル公爵家から婚約破棄を申し入れた時の、国にとって影響力の大きい四大公爵の一柱が他貴族からの信頼を失うであろうリスク。  それと同時に、もし公爵家が公式に婚約破棄の申し入れを行いあの写真が世間の目に触れれば、イーサンへの…ひいては王族への信頼もなくなるであろう。お互いの利害のためにもこちらで上手く処理を行えと…捨て身覚悟で脅しているのだ、この男は。  たとえ王族から婚約破棄を命じ発表したとしても、多少は王族や公爵家を疑心する者が現れるだろう。だが、そんなリスクを背負ってもこの男は断固としてイーサンとシャロンの婚約破棄を望むのだろうな。それは、王族がナイトベル公爵家の信頼を失った事と同義である。  国とは人、信頼なくして成り立つものではない。…悔しいが、仕出かしたのはこちら。信頼を取り戻す為に努力を始めるのも、またこちらからなのだ。 「……相分かった。王として、この件は最後まで誠意ある決断を下すと約束しよう」 「有難うございます、陛下」
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