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不敬だ、と彼女を責めることは出来なかった。なぜなら、彼女の表情はあまりにも真剣で、嘘をついているとは思えなかったからだ。
それに彼女は私が幼い頃から側にいてくれた人だ。きちんと伝えた事はないが、私より7つ上の彼女は私にとって親愛なる姉のような存在。私が嫁いでも、彼女が良ければ一緒に来て欲しいと思うほど、私にとって彼女の存在は大きい。
そんな彼女に『破滅』だと言われた。
率直におそろしくなった。得体の知れない不安感で思わず顔を顰めてしまう。
目の前に用意されていた紅茶の温かさが外気に触れて段々と冷えていくように、私の頭も真っ白になっていった。
「…な、なぜ、そう言い切れるの?」
なぜ彼女が突然このような事を言い出したのか理由はよく分からないが、とにかく話を聞こう。
この国が建国した時から支えてきた四大公爵家のひとつである我がナイトベル家が没落するとは到底考えられないが、この話は真剣に向き合わないといけない。
そのように本能が告げている。
「今から私がお話しする内容は、お嬢様にとって荒唐無稽な内容だとお思いになるかもしれませんが…」
「『転生者』のくだりでもう十分そう感じているわ。けれど、なぜなのかしら。無視してはいけない話のように思うの」
「…この世界は、私の前世でとても人気のあった乙女ゲームの世界なのです」
そう切り出して彼女が話しはじめた内容は、本当に、本当に本当に本当に荒唐無稽な話だった。
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