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「そ、そういえば。シャロン嬢は長期休暇に入る前に行われる剣技大会をご存知か?」
長期休暇。晩夏から秋にかけての長い休暇期間なのだが…。
「…騎士学部の生徒中心で行う、2ヶ月後にあるトーナメント戦の事ですね」
魔法と剣技を駆使して自身の力と価値を誇示する大会だ。
「そうだ。授業の一環とは言え、騎士学部の生徒にとっては将来がかかった大切な大会でな」
「エリック様もご出場されるのですよね? 陰ながら応援を、観戦を楽しみにしています」
「ありがとう。俺の自慢の後輩も出場するから、今年の剣技大会はきっと観て楽しいものになると思うぞ」
「あら、そう聞いてしまうと今から剣技大会が楽しみで仕方ありませんわ」
私がそう言うと、エリック様は目を細めて笑った。整ったお顔立ちをされているので、太陽の日差しも相まって笑顔が眩しい。
エリック様と穏やかに他愛のない話をしていると、昼食を乗せたワゴンを押してやって来たソフィの姿が見えた。
「…今から昼食だったんだな。それは失礼。では」
「はい、お時間を頂きありがとうございました」
「こちらこそ。…暇な時にでも、騎士学部の練習を覗きに来るといい」
「まあ。ではその時はお言葉に甘えて」
私たちは別れの挨拶を交わし、側にまで来ていたソフィは深くお辞儀をして去っていくエリック様を見送った。
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