第5話(1) メイドの恋愛講座

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 ソフィの話についていけなくなった私は、困った顔でソフィを見上げた。 「お嬢様が素敵な恋と出会うための、重要なお話をしております!」  と、素晴らしい笑顔で答えられてしまうと、こちらとしては何も言えない。ソフィは「それでお嬢様、何タイプのイケメンを捕まえに行かれますか?」と、戸惑う私に構わずに話を続けた。 「文化系タイプであれば生息地は図書館…または喫茶店などでしょう。肉体派タイプであれば、手っ取り早く騎士学部へ行かれるといいですね。ノリタイプは…このタイプは確かに一緒に過ごすと楽しいでしょうけれど、一夜限りを求める者も多くいるので要注意ですね…私としてもお嬢様にはお勧めしたくありません。それでも出会いたいと仰るなら、クラブや音楽フェスに行かれてみると…あ、この世界にはそのようなイベントなどありませんでしたね。ふむ、どこに生息しているのでしょう…?」 「なぜかしら…ソフィの言っている事を理解出来ないのは、私が恋愛初心者のせい…?」 「つまりは、お嬢様のタイプの異性が好んで過ごす環境に足を運ばなければ、好みのイケメンとは出会えないと言う事をお伝えしたいのです! 見当違いな場所で出会いを待っても、現れてきてはくれないのですよ!」 「……に、肉体派っ、多分私は肉体派の男性が好きだわ!」  ソフィの勢いに圧倒され、私は慌てて答えた。彼女がこの件について真剣に考えてくれていることがよく伝わってくるほどの熱意だったのだ。  咄嗟に肉体派と言ってしまったが、私が好んで読むロマンス小説の主人公は騎士や英雄が多いし、鍛えられた肉体には思わず視線がいってしまう。さっきだって、エリック様の制服の上からでも分かる胸板の厚さや腕の太さに目がいってしまっていた。…少しはしたなかったかしら。 「肉体派…ですか。意外でした。お嬢様はシモン様のような線の細い美麗な殿方を好まれると思っておりました」  ソフィは意外そうな顔で私を見つめた。  お兄様のような…? 確かに、お兄様は最高に素敵だし、自慢の兄だわ。でも、異性としてと考えると…。ふと、疑問に思ったのでソフィにたずねてみた。 「ちなみにお兄様のタイプは何になるの?」 「シモン様は…文化系タイプ…の中でも、美人タイプ、秀才タイプ……そして確実に言えることは、絶滅危惧種ですね」 「まあ!」  こんな身近に、絶滅危惧種がいたなんて!
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