第5話(2) 肉体派の生息地へ

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第5話(2) 肉体派の生息地へ

 昼食を食べ終えてから、私はさっそく騎士学部のエリアへと足を運んでいた。ソフィが言うにはなんでも、『思い立ったが吉日』らしい。ちょうど、エリック様からお誘い…のような言葉を頂いたのだから、使う手はない! と、彼女の助言を得てここに来ている。 「普段立ち寄ることのないから新鮮ね」 「貴族学部の生徒とは違い、やはり体格の良い殿方ばかりですね!」  ソフィは目を輝かせて興奮気味である。殿方を吟味するなどはしたない…と思いながらも、確かにソフィの言う通り。すれ違う殿方達は皆凛々しいお顔立ちながらも太い首、厚い胸板、筋肉質な手足、日に少し焼けた小麦色の肌…と、男らしい方ばかりだ。 「…やはり貴族学部の生徒がここに来る事は珍しいのかしら。周りの視線を感じて、とても気まずいわ…」  そうなのだ。ソフィのことをとやかく言えないほど、私も周りの殿方を物色するように見て回っているからよく分かる。目を向けると彼らとは必ず目が合うのだ。あちらも貴族学部の生徒となると、物珍しく思うのかもしれない。 「ふふ、お嬢様。それは当たり前の事でございます。なぜなら! この私が愛情込めて手塩にかけて育てたお嬢様はこんなにも美しく、可憐で、お可愛いのですから! 意思に反してでも自然と目を向けてしまうものなのですよ!」 「も、もうっ、ソフィったら。こんなところでやめてよ…!」 「照れるお嬢様も愛おしい…。はあ…」  ソフィったら、すぐそうやって私を子供扱いするんだから。だが、ソフィに褒められてまんざらでない私は、咎めないでおいてあげた。彼女の変わらない愛情に、とても安心する。
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