第5話(3) 新しい友人

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「エリック様は、ご友人の方々とお話する時は砕けてらっしゃるのですね」 「ま、まぁ…性格的にあまり畏まった事が得意ではないのでな」 「でしたら、私とお話する時も無理をなさらなくていいのですよ」  私の言葉を聞いて、エリック様は困ったように笑う。 「私は…イーサンの側にいながらアイツの暴走を止められなかった…いや、黙認すらしていた。結果、シャロン嬢を深く傷付ける事態へと発展した。私は貴女にどう償っていけば良いのか、未だに分からない…」  悲しげな表情で笑うエリック様は、とてもご自身を責めているようにみえた。  確かに、あの日の事を考えるとまだ胸が痛い。しかし、落ち着いて考えられるようになった今思うと、あの日唯一声を荒げてくれた彼を見て、救われていた自分もいたのだ。それに気付いた時、私はエリック様を責める気持ちなど一欠片も無くなっていた。 「エリック様、あの日のことはもういいのです。確かに悲しかったけれど…私は、私の代わりに怒ってくれたエリック様をみて、救われもしたのです」  だから、素直な気持ちを伝えてみよう。 「罪悪感に苛まれる関係性なんて、とても悲しいです。エリック様、私たちお友達になりましょう」 「いや、しかし…」  エリック様は侯爵家の息子、私は公爵家の娘。私にも王族の血が僅かながら流れているから、彼を遠慮させているのだろうか。遠慮するエリック様を眺めながらそんな事を思った。 「あら、私はエリック様の友人にはなれないのですか? それはとても寂しいですわね」  と、私が少し目を伏せながら言ってみせると、エリック様は目を丸くして「とんでもない!」と焦った様子をみせた。 「…貴女がそう仰って…いや、シャロンがそう言ってくれるなら、俺も無理をしなくていいから助かる」  そして、気恥ずかしそうに笑う。 「きっと、自然体でいらっしゃるエリック様の方が、素敵なのでしょうね」  私も心から素直に笑った。いつもソフィと笑い合っているような、貴族令嬢ではなくシャロンとしての笑顔。
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