第6話(1) 出会い

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第6話(1) 出会い

 ソフィ達を待っている間、近くの木陰の下にあるベンチに移動してルーカス様と楽しく歓談していると、ルーカス様の同級生より先生からの呼び出しの知らせを受けた。 「申し訳ないな、シャロン嬢」 「いえ、とても楽しいひと時でした。また機会がありましたら、ぜひ」 「あぁ、ぜひとも」  片手を上げて去っていくルーカス様に軽く頭を下げて見送ったあと、私は考えた。さて、何をして待っていよう? 「こんな事なら小説を持ってくるんだったな…」  荷物になるからと、騎士学部のエリアに寄る前に自身の教室の机の中にロマンス小説を仕舞ってきたのだ。ここまで長居するとも思っていなかったのだから仕方ない。  手持ち無沙汰な私は、周りを観察して暇を潰すことにした。  騎士学部の演習場は広く、土を固めて作られた地面の周りをぐるりと芝生と木々で囲んである造りだ。私が今休んでいるベンチの下には青々しい芝生が敷き詰められている。貴族学部の女生徒の大勢もこの芝生エリアで休んで友人と歓談しているようだ。  …いや、あれは殿方を物色している。地面エリアで鍛錬中の騎士の卵たちを見る目付きが本気だ。 「…なぜ……ロン様が…」  ふと、私が見つめていた先とは別のところから、私の名前が呼ばれた気がしてそちらに目をやった。
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