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「…まさか、シャロン様のような高貴な方が私達の名をご存知とは…感激ですわ」
どの口が言う。マシャーク伯爵令嬢が話しかけてきたことで、私は改めて彼女たちに目を向ける。
「勿論、存じております。私は、シャロン・ナイトベル。四大公爵柱のひとつクロード・ナイトベル公爵の娘ですもの」
余裕ある微笑みを向ければ、令嬢達はうぐ、と喉を詰まらせていた。
「貴女たちの言う通り、ここは伝統ある王立学園です。私も貴族の一人として、この学園に通うことを誇りに思います。だからこそ、この学園の生徒として相応しい行動を取るべきではございませんの?」
私の投げかけた言葉に、彼女たちの誰も答えてはくれなかった。
「誇り高き貴族として、その行動に責任を持って頂けることを願うばかりです」
そう締め括ると、彼女達は顔を歪めるも何も言い返しては来ず、「…もう行きましょう」と言うマシャーク伯爵令嬢の言葉を合図に逃げるようにこの場を去っていった。
私は呆れる気持ちで彼女達の後ろ姿を見送った後、ふと、先程の男子生徒が気になった。…令嬢達の酷い言葉に傷付いてはいないかしら…。心配と同時に、彼の後を追いかけようかと考えている自分に驚いた。
「…『思い立ったが吉日』…」
私に出来る事なんて何もないけれど。
人に傷付けられた痛みをよく知る者として彼を放ってはおけなかった。何より、あの金色の瞳が頭から離れない。
私は彼が去って行った方向へ、何故か期待感のようなものを胸に抱き小走りで追いかけた。
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