第6話(2) 綺麗な瞳

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「ではレオン、と」  クスクスと笑いながら、レオンの名を呼ぶ。レオンはやはり赤い顔で、「はい…」と小さな声で返事をした。 「私のこともシャロンと呼んでください」 「む、無理です…!」  あら? ここははっきりと答えるのね。先程まであんなにモジモジとした様子だったのに。…そんなに嫌なのかしら? 「…シャロンと、お呼びくださいませ」 「無理です! それだけは…!」  こんなに嫌がられるとは! なんだか面白くないと感じた私は、ムキになってレオンに大きく一歩詰め寄った。  すると、レオンも一歩下がる。更にムッとして、もう一歩詰め寄ると、レオンは困り果てたような情けない顔でいくつもの模擬剣を盾にするように顔の側で抱え直した。  抱きかかえ直した事により、ガチャガチャと模擬剣が擦れ合う音を聞きながら、私は寂しい気持ちになる。…レオンからすると、迷惑な話なのだろう。 「…わかりました。ご迷惑を、かけましたね」 「え? あのっ…」  俯いていたので、レオンがどんな表情をしているのか分からないが、聞いていて心地良かった低い声は掠れていて、戸惑っているように思えた。 「…では、ご機嫌よう」  相手の顔も見ずに挨拶をするのは無礼なので、私は心の中で深呼吸をすると悲しい気持ちを仕舞い込んで笑顔を浮かべる。そして、貴族令嬢らしくレオンに微笑んで優雅に挨拶をした。  レオンはそんな私を、寂しそうな笑顔を浮かべながら眺めている。そして「今日は助けて頂き有難う御座いました。…ナイトベル公爵令嬢様」と言った。
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