83人が本棚に入れています
本棚に追加
第6話(3) 胸の奥に秘める
来た道を戻ると、そこにはソフィとエリック様の姿があった。
「お嬢様!」
「シャロン!」
ソフィの顔には心配していますと書いてある表情で、私の姿を見つけるなり二人はこちらに駆け寄ってきた。
「どちらに行かれていたのですか? 心配したのですよ!」
「あ…ごめんなさい。二人が戻るまで散歩を、と思って…」
レオンの事は言わなかった。
…なんだか、言いたくなかったの。あの金色の瞳の美しさとか、お顔を赤らめたお可愛らしい表情とか、心地の良い低い声とか、拒絶された悲しい気持ちとか。全部、心の奥底に閉じ込めて鍵をかけたかった。
「お嬢様…? どうかなさいましたか?」
「え…?」
「お暗い表情をされているので…」
ソフィの言葉にドキリとする。ソフィには敵わないなぁ…。
「散歩して、疲れたのかも」
私は肩をすくめてソフィに笑顔を向けてみせるが、ソフィはまだ納得していないような表情だった。エリック様も心配そうなお顔でこちらを見ていたが、木陰にあるベンチを手のひらで指し示しながら、私を優しくエスコートしてくれた。
「疲れたのならあちらで休もう」
最初のコメントを投稿しよう!