第1話 メイドの告白と教え

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 確かに、私はイーサン王太子と10になる年に婚約し、16歳の今に至る。  初めは私のことを大切にしてくれていると感じていたが、いつの間にか彼の熱意は冷め、今ではスイートラバー子爵の私生児だと噂されるリリス嬢に夢中になっている節はある。  冷めた態度の婚約者に悲しみながらも、政略結婚だから仕方ないと言うことを理解している。だからせめて、将来、私が真摯に彼を支え、彼も私を尊重してくれれば、愛情はなくとも上手くやっていけるのではと思っていた。  そう頭では理解しているのだが、人の心とはままならないもので、私はイーサン王太子に好意を抱いている。そんな中、仲睦まじく戯れ合う殿下とリリス嬢の姿を見る度に、胸を痛めていた。  そう、確かに私は嫉妬していたのだ。  私はリリス嬢を虐める…のかもしれない。  人の心は脆く、時に恐ろしい思考へと導くのだから。メイドの話を聞いて、よりそう強く感じた。  嫉妬に駆られてリリス嬢を階段から突き落とすという私の所業。怒りに支配され最愛のリリス嬢を害した私を恐ろしい魔物の住む地にある幽閉の塔へと生涯閉じ込めるというイーサン王太子の所業。  絶対に起きる出来事だと断言はできないが、起こらないとも言えないのだ。可能性はある。
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