第6話(3) 胸の奥に秘める

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「エリック様、ありがとうございます」 「俺と君のメイドで作ったドリンクだ。『すむーじー』と言うらしく俺は知らない飲み物なのだが、シャロンが好きだと聞いてね。甘酸っぱくて美味しいぞ」  エリック様が手渡してきたのは、薄紫色の飲み物だ。 「まあ! エリック様がスムージーを?」  スムージーはソフィが昔から作ってくれる飲み物で、私だけでなくナイトベル一家で大好きなメニューだ。それに公爵家の従業員にもレシピが浸透しているほどの人気。美容効果もあると聞き、私とお母様はそれはもうさまざまな野菜や果物の組み合わせのスムージーを飲んできたものだ。 「果物も叩いて潰しては揉んで、野菜をおろし金ですり下ろして…と、中々に骨の折れる作業だったが、初めてのことで楽しかったよ」 「お嬢様、エリック様は見てて危なかしいので私が行いますと何度も申し上げても、自分がやると仰って突っぱねるのですよ!」 「む…次は大丈夫だ。もっと要領よくやれるぞ!」  なんだか二人は仲良くなっているみたい。二人の会話を聞いて、笑みが溢れた。 「エリック様、ソフィ、ありがとうございます。有難く頂戴します」  そう言って、スムージーを一口含む。口の中にベリー系の甘酸っぱさが広がり、私は更に笑みを深めた。 「…とっても美味しい」  私の言葉を聞いて、エリック様とソフィがハイタッチする。…本当に仲良くなったのね。  私たちはこの後、時間が許す限り三人で他愛のない話で盛り上がったのだった。
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