第7話(1) 気になる存在

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「…元気を出してください、お嬢様。今日は放課後にエリック様やルーカス様の練習を見に行かれると仰っていたではごさいませんか」 「うん、とても楽しみよ」  最近の私は、放課後に暇を持て余しており、よくエリック様のお誘いをお受けしていた。  以前は王太子姫教育が大変で今のように遊びに向かうなど考えられなかったが…。友人と呼んでいた令嬢たちはいたが、婚約破棄した今、彼女たちから以前のような積極的なお誘いは無くなった。どうやら私には友人がいなかったようだ。  …でも、ソフィがいるし、最近ではお友達になってくれたエリック様がいるので、寂しくはなかった。 「はい、出来ましたよ!」  ソフィの明るい声に視線を上げると、鏡の中の自分と目が合う。いつもおろしている髪は、今日はソフィの手でハーフアップにされていた。サイドには編み込みも施されており、いつもより柔らかな雰囲気だと自分でも思う。 「うわぁ、可愛い…! ソフィは器用ね、ありがとう!」  季節は初夏に入り暑くなってきたので、それに合わせて涼しげな髪型にしたのだとソフィは得意気だった。  ひと目で気に入った私は、少し沈んでいた気持ちが晴れた気がした。喜ぶ私を眺めながら、ソフィは満足気に微笑んでいた。  レオンがこの髪型を見たら…。 「わ、私ったら、また…!」 「? お嬢様?」  またレオンの事を考えていた…! なぜなの? 私は彼に拒絶されたのよ。これ以上、何を考えろって言うのよ!
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