第7話(3) やらかす王太子

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「…私との婚約が破棄されたからと言って、すぐに他の男と親しくなるなんて…シャロンは意外と好色女なんだな?」 「………はい?」  私は驚きのあまり、聞き返すように返事をした。何を言われたのか理解出来ないと殿下を見つめれば、殿下は私を鼻で笑って見ていた。 「…イーサン。話がある…」  バンッと強くテーブルを叩きその場に立ち上がるエリック様。表情を伺えば、怒りが滲んでいた。 「まぁ、落ち着けエリック。実はとある噂を聞いてな。シャロンとエリックが恋仲であると…私も信じてはいなかったが、今日の二人の様子を見ると、なるほどと納得してね」 「噂…ですか。昨日まで謹慎されていた殿下は一体誰からその情報を得たのです?」  好色女だと貶められたことにより怒りで視界がチカチカする。必死に冷静さを保ちながら、私は殿下に尋ねた。 「それは、リリ………いや、友人だ」 「……そうですか。リリス嬢から…さようで」  心の中はもう、大吹雪だった。怒りで熱くなっていた頭が、スゥーッと冷えていく。私は思った。この人にだけは、とやかく言われたくはない。  リリス嬢と言うことは…少し前にマシャーク伯爵令嬢が私に難癖つけてくる時に、エリック様との仲をどうのこうのと言っていたな。噂の出所はそこからだろう。 「殿下もリリス嬢も謹慎中の身でしたのに、連絡をお取り合いになれるとは不思議ですね。また密会でもなさっていたのですか?」  私が氷の微笑を浮かべると、リリス嬢だとバレてバツの悪そうな顔をしていた殿下は、ムッとした表情で「会ってなどいない! ラザークを通して文通していただけだ!」と反撃してくる。  私はぐるりとラザーク様に顔を向けた。ラザーク様は「ひっ…!」と小さく叫び、目を逸らす。「…ふ、塞ぎ込む殿下がお可哀想で…元気になって頂きたくて…」と、情けない声で言い訳をしだした。
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