第8話(1) 愚かな男

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第8話(1) 愚かな男

 世界は馬鹿で溢れている。そう気付いたのは、9歳のときだった。  僕は生まれつき魔力の高い子供で、魔力を制御出来ずによく暴走させていた。さらには身体の弱い幼な子だったので、外に遊びになんて行けずにベッドの上でひたすら読書に明け暮れると言うなんともつまらない幼少期を送っていた。  僕の周りを構築する世界は本の内容と、毎日国王の為に働く父親の背中だけで構成されていた。年を重ねるにつれ、国王のために…引いては国のために働く父上をとても誇りに思いはじめた。僕も将来は父上のようになりたい。父上のように、優秀な人になりたい。僕も未来の国王に仕えたい。いつからか、それが僕の目標になっていた。  当たり前だが、友人もいない。成長と共に身体も強くなっていったのか、気付けば風邪ひとつ引かない丈夫な身体を手に入れていて、それと同時に魔力も安定してきて暴走させる事もなくなっていった。  だけれど、ずっと引きこもって過ごしていた弊害からか、どう友人を作ればいいのか分からず…結局、僕は幼少期と変わらない引きこもり続ける生活を送った。  そんな時に王宮からお茶会の紹介状が我が家に届き、やっと同年代の友人と知り合えるんだと僕は嬉しく、その日までが楽しみで待ち遠しくて仕方なかった。
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