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殿下のために、国のために、自分のために…もうどれが正解の行いなのか分からないよ。
息抜きになるならと殿下のために目を瞑ってしまったリリスとの関係。その結果、とても大切な筈だった一人の少女を深く傷付けて、僕は罪滅ぼしだと必死に学園中を駆け回り彼女の為に一刻も早く穏やかに過ごせるようにと尽力した。
渋るイーサンを何度も説得してやっと謝罪の場を設けて…国のために王族と四大公爵家一柱の亀裂を埋めるため二人の関係性の修復をと思えば、当の本人がやらかした。
ラザークもラザークだよ。なぜよりにもよって、リリスとの仲を取り持つ!? あんな立場も弁えずにイーサンを誘惑する女…シャロン嬢の噂を吹聴する下品な女なんて、『王太子』の隣に相応しくない。そんな女に生涯仕えることになったら、この世は地獄だと恨んでしまうと思う。
「…マーサ、この世界は馬鹿ばかりだね。僕も含めて…」
「……さぁ? お馬鹿なマーサには何のことか分かりませんねぇ」
肩をすくめておどけるマーサと僕はクスクスと笑い合った。
…こんなに後悔することになるくらいなら、僕は。これからは僕のために行動することにするよ。
僕の周りは相変わらず馬鹿ばかり。
僕は気高い者が好きだ。賢い者が好きだ。優れた者が好きだ。優秀な者が好きだ。愚かな者が、一番嫌いだ。
ねぇ、イーサン。君はなんて愚かな男なんだ。
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