第9話 愛を囁く

5/9
前へ
/320ページ
次へ
「あれ、君は……レオンじゃないか!」 「え! お兄様!?」  入店したばかりのレオンがお兄様の声に気付きこちらに目を向ける。と、驚きに目を見開き固まっていた。 「な、ナイトベル小公爵様…! お久しぶりです」 「シモンでいいよ。久しぶりだね、レオン。元気だったかい?」  お兄様は親しげにレオンの元へ赴き、そしてレオンを伴ってこちらへと戻ってくる。よく見るオドオドとしたレオンは私を見るなり、また固まった。 「シャロン、こちらはレオン。レオン、こちらは私の妹の……レオン?」  彼は真っ赤に顔を染めて、私を凝視している。何故だか私まで顔が熱くなる。私はコホン。と小さく咳払いをして空いている席を手のひらで指し示した。 「…レオン、お久しぶりですね。宜しければ、どうぞこちらにお掛けになって」 「なんだ。二人は友人だったのかい?」  お兄様がニコニコと笑って、私が指し示した席へ着席するようレオンを促していた。  …友人と呼べるのかしら? 私、レオンのこと名前しか知らないのに…。それよりも、まさかお兄様とレオンがお知り合いだったなんて! 私よりもお兄様との方が親しそうなところがなんとなく悔しい。 「…お嬢様…あのお方は一体…?」  と、背後でボソリと囁くソフィに、「学園の同級生よ」とだけ答えた。「…どこかで……見たことがあるような…」と未だ思案を続けるソフィ。
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加