第9話 愛を囁く

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「お嬢様、良ければこちらをお召し上がり下さい」  そこにやって来たのはアカシャ。  目の前に出されたのは、爽やかな酸味と上品な香りが売りのシャーロームティーによく合う濃厚なチーズケーキだった。レオンの前にも並べられる。 「アカシャ、ありがとう」  アカシャの気遣いに涙が出る。レオンもアカシャにお礼を言い頭を下げていた。 「レオン。折角だから頂きましょう」 「…はい」  眩しそうに目を細めるレオンの視線を受けて、私はもう一度勇気を出してみることにした。 「きょ、今日の私、いかがですか? このボンネット帽の刺繍、私が刺したのですよ」  貴方の瞳と同じ色です。そう心の中で呟いてレオンを見ると、レオンは真っ直ぐに私を見つめてとびきりの笑顔で微笑んでいた。 「素敵です」 「よ、良かった。頑張って刺した甲斐がありました…」 「まるで、月の女神ディアナ様のように美しい女性だと見惚れました」 「……へ?」  私はキョトンとレオンを見つめる。女性を女神に例えることが求愛行動に等しいということを、レオンはちゃんと分かっているのだろうか?  レオンは相変わらず頬を染めていて、私を魅了するあの綺麗な瞳で愛おしそうに私を見つめるのだ。 「…俺の瞳と同じ色を、貴女が纏ってくれる事が、とても嬉しい」
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