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そこからのソフィは凄かった。
熱を発する魔法具のコテを構えるソフィの目は鷹のように鋭い。話しかけてはいけないオーラが漂っていたため、私は口を噤むしかなかった。いつも以上に手が高速で動き、私の髪型とメイクを仕上げていく。
「……お嬢様! なんて、可愛いのかしら!」
出来上がったソフィの渾身の姿を見た私は、本当にとびっきり可愛くなっていた。いつもストレートの髪はゆるく巻かれふわふわに。豪奢なバレッタの代わりに紺色の透かしレースのリボンが主役のバレッタを。胸元にはまるでレオンの瞳を思わせる金のブローチをつけてくれた。
いつもは肌を整える程度のメイクだが、今日は特別に淡い桜色のリップを塗って貰った。
「…私じゃ、ないみたい…」
鏡の中の私は普段の私よりも優しそうに見える。ううん、基本的にはいつもと変わらない私なのだけれど、取っ付きにくそうな雰囲気が無くなったと言うか…冷たそうな印象が薄れたと言うか…。
「とても可愛いわ…」
「お嬢様、それは当たり前の事でございます。私のシャロンお嬢様は世界一お可愛いのですから!」
「もう、ソフィったら……いつも有難う」
私ははにかんでソフィを見上げる。ソフィは目を細めて優しい視線で返してくれた。
あ、この目…。
そっか、色や型は違うけれどソフィの温かい瞳とレオンの瞳は似ているんだ。だから、レオンに惹かれたのかな。うん、もちろん今はそれだけに惹かれている訳ではないけれど、初めは確かに、レオンの綺麗な瞳を忘れられなかったのよね。
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