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「ところでお嬢様。いつの間にあんな素敵な殿方とお知り合いになったのですか?」
そうだった。ソフィにまだ何も伝えていなかった。私は簡単にだが、レオンとの思い出を語った。
マシャーク伯爵令嬢たちに言い掛かりをつけられた時、さりげなく助けてくれたのがレオンだったこと。イーサン殿下とのお茶会(謝罪の場)帰りに階段で鉢合わせし、足を踏み外した時に助けてくれたこと。『ナイトジャスミン』でお兄様とソフィが出掛けた後、月の女神のようだと褒めてくれて初めて愛を囁いてくれたこと。
「まぁ…なんて素敵なお話でしょうか…! まるでロマンス小説のようですね」
ほう…と息を漏らすソフィはうっとりとしている。
「それにあのお顔立ち、佇まい、そしてやけに印象に残る雰囲気…まさか攻略対象者以外にあのような素敵な殿方がいたなんて! 私のお嬢様になんてお似合いなお方なのでしょう!」
「ええ…!? お似合いだなんて…!」
私とソフィはきゃあきゃあと黄色い声をあげて、レオンとの未来に思いを馳せた。
「一体、どちらの御子息ですか?」
「それが…名前しか知らなくて、分からないの」
「なんと! どうしますか? 他国の王子様でしたら」
「そ、それはないと思うけれど…そうだったらどうしよう?」
「お嬢様の御身分は十分です。嫁ぐしかないでしょう!」
「そんなっ…嫁ぐなんて気が早いわ! …その時はソフィもついて来てくれる?」
「もちろんではありませんか! 何がなんでもソフィも参ります!」
なんて妄想話をしていると、いい時間になったので私たちはそろそろ自室を出て剣技大会の会場になる闘技場へと向かうことにした。
闘技場は学芸都市にはなく王都にあるため、生徒それぞれ馬車を手配し現地に向かうのだ。馬車で20分ほどの距離なので、楽な移動だ。
「ソフィ、行きましょう!」
「はい、お嬢様!」
部屋を出る頃、私はとてもご機嫌で気持ちが浮ついていた。だから、ソフィの悲しい呟きに全然気が付かなかったのだ。
「でも剣技大会の優勝者は、エリック様なんだよね…」
もうすぐ剣技大会が開催する。
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