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「さぁ、レディたち。そろそろ中に入ろう」
お母様とソフィで、今流行りの髪型やメイクの話で盛り上がっていると困った顔で笑うお父様が声をかけてきた。
「まぁ、ごめんなさい、旦那様。すっかり盛り上がってしまいましたわ」
「美容とお洒落に関しては、女性は話が尽きませんからね…」
申し訳無さそうなお母様とソフィの隣で私はクスクスと笑って、お父様の腕に子供らしく抱きついた。
「お父様、殿方のお洒落も知りたいわ。将来のためにも私に教えてくださりませんか?」
是非、レオンとのデートの為に教えて頂きたいわ!
「将来のため………私がかい? ううん、教えてあげたいのはやまやまだが、私はあまり洒落や流行が得意ではなくてね…。シモンの方がいい先生になれそうだ」
お父様はお兄様を生贄にして華麗に逃走を図る。そんなお父様に「あら、お父様。今日お召しのクラヴァット、とても素敵ですね。今巷で流行りのマダム・シフォンのデザインにとても似てるわ」と言うと、お父様はしまったといった顔で口を噤んだ。
お父様は社交場でも有名な洒落た殿方なのだ。
じっとお父様を見上げていると、私が『将来のため』なんて口にしたから、父親として嫉妬したのだと白状した。
私たちは笑い合って会場入りする。
ああ、私は本当に浮かれているわ。鳥が空を飛んでいるところを見るだけでも可笑しくて笑っちゃうもの。
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