4 やよい軒とかつや

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俺も女もほぼ同時にカツ丼を食べ終えた。 俺が一息付いたのを見計らったかのように、 女は席から立ち上がり、 伝票を手に取ってレジへと向かう。 そして、当初の予告通りに二人分の会計を済ませる。 『かつや』を出る俺と女。 俺は女に「ごちそうさま」と礼を言う。 しかし、女はどこか苦しそうだ。 食べ過ぎた、と呻くように女は言う。 俺も少々お腹が苦しい。 無理も無い。 『やよい軒』でチキン南蛮定食を平らげ、 しかもご飯は2回もお替りしたのだから。 それを言うならば、女は2回のお替りとも 大盛りご飯だったのだから余計にお腹も苦しいのだろう。 大丈夫?などと女に声を掛けつつ 高円寺駅の改札へと向かう。 改札を通過してホームへと向かう俺と女。 ホームに上がり、俺は立川方面、 女は千葉方面の電車を待つ。 女は依然として苦しそうだ。  あぁ、私は暴食の罪で、  十六小地獄のどれかに堕ちるのね。 などと言ってはいるが、中々辛そうだ。 そろそろ立川方面の電車が到着する。 俺はこれに乗って荻窪に帰らねば。 けれども、苦しそうな様子の女が気が気でならない。  荻窪に行って、俺の部屋で少し休んでみる? と、特に深く考えずに女に提案する。 女は少し考える様子を見せ、そして、首を縦に振る。 立川方面の電車が到着し、ドアが開く。 俺と女は乗り込み、空いているシートに並んで座る。 ドアが閉まり、電車は出発する。
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