6 スターバックス

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女が向かいつつあるであろう御茶ノ水駅の方へと、 俺は急ぎ足で通りを歩む。 つい先程、丸亀製麺の前にて別れた女が、 まだ駅には辿り着いていないでくれとの 祈るような思いを抱きつつ。 時刻は夜の八時前。 夜の帳はとうに空を覆ってはいるけれども、 道沿いの店舗の照明、 そして居並ぶ街灯とが煌々と路を照らし、 道行く人々の姿を浮立たせているようだった。 十月の微風はまだ仄かに熱を孕み、 残暑の片鱗をその中に留めてはいたけれども、 深まり行く秋、そしてその後ろに確と控える 冬の存在を感じさせるかのような 深々たる冷たさの予感もまた抱かせるものだった。 その冷たさの予感は私の胸中に増しつつ在る不安、 そして焦りとを際立たせるようにも感じられる。 その姿を露わにしつつある俺の中の焦りは、 丸亀製麺での女の不自然な態度を思い起こさせた。
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