6 スターバックス

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その言葉を耳にした女は、 その目を大きく見開き、 呆然としたような表情となる。 俺は、再び、その言葉を口にする。 最初よりもゆっくりと、そして力強く。 自分自身にも言い聞かせるように。 その言葉が女の心の震えを鎮めてくれるようにと願いながら。 「だって俺、舞島さんのことが好きだから。」 俺は女の肩を引き寄せ、 そして、そのほっそりとした体を抱き締める。 脱力したかのような女の体が、 その重みを俺の胸へと預けてくる。 女の熱が伝わってくる。 彼女の体を抱きしめている俺の両の手から、 彼女の重みを受け止めている俺の胸から。 微風が揺らす女の髪の毛が俺の鼻先を擽る。 微風が運ぶ女の涙の薫りが俺の鼻孔を擽る。 女の耳元で、俺は再度囁く。 「好きだよ、舞島さん。」 涙の薫りがその濃さを増す。 女の体を抱きしめていた手を緩め、 そして再び彼女の両肩を掴み、 支えるようにしながらその体を俺の胸から離す。 そして、女の顔を見遣る。 「嫌…見ないで…。」 そう言って、女はその顔を両手で覆う。 俺はその手を掴んで下へと降ろす。 泣き腫らした目で俺を見つめる女。 俺は戯けた様な口調で語り掛ける。 「そんな顔しないでよ、  俺が意地悪したみたいじゃん。」 女は泣き笑いといった表情となる。 沈黙が流れる。 どちらから顔を近付け始めたのかは 分からなかったけど、 俺と紗花は唇を重ねていた。 何時しか、ごく自然に。
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