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程無くして、俺たちが注文したお寿司がレーンに流れてきた。
俺と紗花は流れてきたお寿司をレーンから取り上げ、テーブルの上へと並べる。
握り寿司や巻き寿司、軍艦巻きやタマゴなどのお皿でテーブルの半分程が占められる。
俺と紗花は手を合わせ、いただきますと言い、そして、お寿司を食べ始める。
二貫が載っている皿が殆どだったが、結局のところ、どちらが頼んだとか、もうどうでも良くなって、一貫ずつ食べるという感じになってしまった。
どうしても二貫食べてみたいと思った場合は追加で頼むなどした。
紗花は例によって、何とも嬉しそうな表情を浮かべつつ、お寿司を口へと運び続けていた。
中トロのお寿司を口に運べば、芳醇な脂の旨味を湛えたその味わいを目を細めながら讃えてみる。
玉ねぎが添えられたサーモンのお寿司を頂いた時には、サーモンが持つコッテリとした味わい、そして玉ねぎの爽やかさとが醸すハーモニーの素晴らしさに歓喜の声を上げる。
しめ鯖のお寿司を頬張れば、酢の働きによって生臭さが中和され、そして旨味が凝縮されたかのような鯖の味わいの素晴らしさを蕩々と口にしてみる。
タマゴの握りを口にしたら、タマゴの甘みや旨味、それらがシャリの纏う酸味と程良い調和を見せていると満面の笑みをその顔に浮かべつつ論評めいた台詞を口にしてみたりする。
兎にも角にも大喜びで食べている。
そんな紗花の様子を『何を食べさせても旨い旨いと言って大喜びするんだよな、この子って』と、面白可笑しいなと、そして可愛らしくもあるなと内心で思いつつ、けれども心に浮かぶその思いを決して口には出さないように自身を制する。
何時ぞや『やよい軒』にてチキン南蛮を一緒に食べていた時、その食べっぷりについて話しているうちに、何故か彼女がその態度を急に変えてしまったことが思い出されてしまったから。今でもその理由は思い当たらない。
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