7 スシロー

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俺はふと目を覚ます。 喉の渇きを覚えた為かも知れない。 壁の時計は夜の三時過ぎを示していた。 起き上がろうかと思ったが、俺の胸にしなだれかかるようにして寝息を立てる紗花の重み、そして、その肌から直に伝わってくる彼女の温もりが、その思いを霧消させた。 俺たちは、二度、体を重ねた。 最初は互いを貪り合うかのように。 二度目はお互いを慈しみ、 お互いを(めで)で、 お互いの味わいを噛み締めるかのように。 紗花の寝息を耳にしながら、 俺はぼんやりと物思いに耽る。 互いに欲望が尽き果て、 気を失うかのように眠りに落ちるその間際のこと。 紗花は囁いた。 「わたしのこと  きらいにならないでね。」 俺は好意を囁いた。 紗花は再び囁いた。 「わたしのこと  きらいにならないでね。」 俺は再び好意を囁いた。 その時の紗花は、 何故か泣きそうな表情(かお)をしていた。 紗花の髪を撫でながら俺は思った。 何がそんなに不安なのだろうか、と。 何故か、紗花のことが遠く思えた。 こんなにも近くにいるのに。 こんなにも愛しているのに。 こんなにも激しく愛したのに。 俺は再び眠りに落ちる。 胸に閊える蟠りを夢の世界へと屠るかのように。
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