五章

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(大麒は、この街に救援に来たんだ)  じっと顔を見つめていると、大麒は青藍に目を向けた。再び歩き出しながら、 「事情は、朔将軍が言った通りなんだ。西芳の被害は軽かったが、下流はどうなっているんだろうと、調査に行ったんだよ。宝珠国との国境の様子も気になったからな。そうしたら、この状況だ。しかも、救援の人手は足りていない様子だった。食事も住処も十分行き渡らず、住民は悲惨な状態に陥っていた。いてもたってもいられなかったんだ」  と説明をした。 「勝手に国境を越えると、後々、何か問題が起こるかもしれないとは思った。しかも、ようやく強硬派を除いたとはいえ、朝廷はまだ一枚岩じゃない。この状況は、知られない方がいいと考えた」 「そうだったのね……」  淡々と話す大麒に、青藍は静かに相槌を打つ。 「今度は、青藍の話を聞かせてくれ」  大麒のまっすぐな視線を受け止め、青藍は後宮から出たことを話した。 「何か手伝えることがないかと思って来たの」  大麒への想いは告げず、そう言うと、大麒は、 「不義密通の疑いを被って、後宮を追い出されたって? 馬鹿者か、お前は!」  と言って、息を吐いた。 「あっ、また馬鹿って言った!」 「馬鹿は馬鹿だ」 「いいの! 私は来たかったから来たの!」  胸を張ると、大麒の溜め息は深くなる。二人の後ろを歩いていた双熹はいなくなっていた。
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