475人が本棚に入れています
本棚に追加
(大麒は、この街に救援に来たんだ)
じっと顔を見つめていると、大麒は青藍に目を向けた。再び歩き出しながら、
「事情は、朔将軍が言った通りなんだ。西芳の被害は軽かったが、下流はどうなっているんだろうと、調査に行ったんだよ。宝珠国との国境の様子も気になったからな。そうしたら、この状況だ。しかも、救援の人手は足りていない様子だった。食事も住処も十分行き渡らず、住民は悲惨な状態に陥っていた。いてもたってもいられなかったんだ」
と説明をした。
「勝手に国境を越えると、後々、何か問題が起こるかもしれないとは思った。しかも、ようやく強硬派を除いたとはいえ、朝廷はまだ一枚岩じゃない。この状況は、知られない方がいいと考えた」
「そうだったのね……」
淡々と話す大麒に、青藍は静かに相槌を打つ。
「今度は、青藍の話を聞かせてくれ」
大麒のまっすぐな視線を受け止め、青藍は後宮から出たことを話した。
「何か手伝えることがないかと思って来たの」
大麒への想いは告げず、そう言うと、大麒は、
「不義密通の疑いを被って、後宮を追い出されたって? 馬鹿者か、お前は!」
と言って、息を吐いた。
「あっ、また馬鹿って言った!」
「馬鹿は馬鹿だ」
「いいの! 私は来たかったから来たの!」
胸を張ると、大麒の溜め息は深くなる。二人の後ろを歩いていた双熹はいなくなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!