五章

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 日が暮れると、瓦礫の片付けも、行方不明者の捜索もできなくなる。遙輝国の衛士たちと宝珠国の兵士たちが、続々と、自分たちの野営地へと戻っていく。彼らと同じ方向に帰る大麒と共に、青藍と双熹も付いていった。大麒は何も喋らない。青藍も何も喋らず、ただ、黙々と歩く。  野営地は、壊れた壁の向こう側にあった。天幕もあったが数が足りないのか、外で寝ている者もいる。 「よお、大麒」  不意に声をかけられ、振り返ってみると、動きやすい服装をした男性が軽く手を挙げていた。服装は遙輝国のものとは雰囲気が違う。宝珠国の兵士だ。 「(さく)将軍」  大麒が男性の顔を見て、名を呼んだ。朔将軍は大麒の隣にいる青藍に視線を移し、 「そっちの嬢ちゃんたちは誰だよ?」  と首を傾げた。大麒がどう説明したものかというように躊躇しているので、 「遙輝国からお手伝いに参りました、氾青藍といいます」  青藍はそう名乗った。双熹も、 「同じく、高双熹と申します」  と礼をする。  朔将軍はにこっと笑うと、 「それはそれは。大麒が呼んでくれたのか? 人手が増えるのは助かる。俺は朔だ。宝珠国の国軍に籍を置いている将軍だよ」  と自己紹介をした。  (宝珠国の将軍。大麒とは親しい様子だけど……)  本来は、宝珠国の遙輝国への感情は良くないはずだ。あらためて警戒をしていると、それを朔将軍に気取られたのか、 「今は非常事態だから、遙輝国と争う気はないよ。というか余力がない。正直、大麒が遙輝国の兵士を連れて来てくれて、助かってるよ」  と、安心させるようなことを言われた。 「宝珠国は最初、被害状況を見誤ったんだ。首都に増援を要請しているんだけど、まだ来なくてさぁ。ここから、結構離れているからなぁ」  朔将軍は気さくな調子で話しかけてくる。 「ま、こんな状況だけど、ゆっくりしていってよ」  ひらひらと手を振ると、朔将軍は近くの天幕へと入っていった。 (話している内容は重かったけど、朔殿自身は、なんだか、軽い人だったわね……)  警戒はしなくても良さそうだ。
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