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いつの間にか、陣営の外れまで来ていた。兵士たちの姿は周囲にはない。皆、疲れて、早々に眠っているのだろう。
ぽつんと立っている天幕へと入った大麒の後に付いていく。
「大麒はここで一人で寝ているの?」
簡素な天幕の中を見回し、大麒の背中に向かって話しかけていると、大麒がぱっと振り返り、やにわに青藍の華奢な体を抱きしめた。
「きゃ……」
青藍は驚いて思わず小さな声を上げたが、大麒は構わずに力を込めてくる。
「だ、大麒……どうしたの……」
大麒の胸の中から戸惑いの声を上げると、
「……お前が後宮を出たのは、俺のせいか?」
苦しそうなまなざしで問われた。青藍は微笑みを浮かべ、
「違うわ」
と否定をすると、大麒の背中に手を回し、
「私がそうしたかったからそうしたの」
と答えた。
「でも、お前は一生残る不名誉を受けた」
「それでもいいの。私は後悔していない」
そして、すぅっと息を吸うと、
「私は大麒のことが好きなの。十年前からずっと。だから、そばに置いて」
告白をし、胸に頬を寄せた。大麒が震える声で、
「やっぱりお前は馬鹿だ……」
と囁く。お互いの鼓動を感じながら、青藍と大麒はしばらくの間、寄り添い合っていた。
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