序章

3/4
前へ
/144ページ
次へ
「は?」  店主が眉間に皺を寄せる。 「高いって言うのかい? 幸運の指輪だよ」 「幸運の指輪なんてものはないです。だって、指輪で幸運になれるなんて、根拠がないもの。それに、本当に幸運になれるのなら、持ち主が手放すはずがないと思います」  青藍はあっけらかんと言ってのけた。  店主の顔がみるみる不機嫌になる。 「お嬢さん、うちの商品に文句を付けようっていうのかい?」  声を荒げた店主に、青藍は、 「これは幸運の指輪じゃないけど、その値段だと安いと思います。この珠を通して見たら、髪の毛が二本に見える。玻璃だったらこうはいかない。これ、水晶ですよ。玻璃よりも高価なものです。だからその値段だと、割に合わないです」  と言った。店主の目が丸くなる。 「本当かい?」 「はい。もっと値段を上げて、見る目のある人に売るといいと思いますよ」  青藍の助言に、店主が「そうかそうか」と嬉しそうにしている。 「私の手持ちでは、その水晶に見合う分は出せないから、遠慮しておきますね。翠玉、行きましょう」  そう言うと、青藍は指輪を置いた。 
/144ページ

最初のコメントを投稿しよう!

476人が本棚に入れています
本棚に追加