身代金目的誘拐?

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 もっと突いてと言えば、もっと突いてくれるようにどっかへ連れてってと言えば、どっかへ連れて行ってくれ、あれ買ってと言えば、あれを買ってくれる。そんな(ひと)がいいと美幸は思う。  だから観光地に詳しくても何処へも連れて行ってくれなくて、金が潤沢にあっても何も買ってくれないと冷たいと思う。美幸はそんな単純な女だ。但し器量は芳しい。けれども、兎に角、低能だ。  だから一筋縄ではいかない女に対するように手練手管を駆使しなくても権謀術数の使い手でなくても何処其処に連れて行ってやろうかと誘いさえすれば、簡単に攫うことが可能だ。おまけに大富豪の令嬢だから狙われ易い。誰に?御曹司とか貴公子なら良いが、身代金目的の誘拐犯に狙われたら・・・と日頃、往々にして鬼胎することがある美幸の父親が恐れていたことが起きた。美幸が行方不明になってしまったのだ。  で、彼が警察に捜索願いを出してから一時間後、ビデオ通話の着信音が彼のスマホから鳴った。美幸からだった。  ビデオ通話に出ると、美幸が背もたれ椅子に縄で縛り付けられて座っているのがモニターに映った。どうやら誘拐犯が美幸のスマホで撮影しているらしい。 「パパ助けて!」と美幸が訴えた後、「この通り、お前の娘は誘拐した」と言う男の声が聞こえた。「娘を返して欲しくば、身代金を用意しろ」 「いくらだ?」と美幸の父親が聞くと、「一千万だ」と男は答えた。  その後の交渉で〇月〇日〇時〇分に〇場所で身代金を受け渡すことに決まった。  見張られるのを恐れてか、「警察に通報すると、娘を殺すぞ!」と男は身代金目的誘拐犯の常套句とも言えることを言ったが、誘拐犯との交渉後、位置ナビによって地図と住所がスマホのモニターに表示され、誘拐犯と美幸がいる場所が分かった美幸の父親は、早速、警察にそのことを含め通報した。  警察は身代金誘拐事件として捜査を開始し、報道協定を申し入れた。  美幸の父親が伝えた現場は、〇山中の廃墟と化した山房だった。警察が駆け付けた時には誘拐犯はいなくて後ろ手に縛られ、胸をはだけられ、下半身を裸にされた状態でぐったりと床に横になっている美幸がいた。どうやら誘拐犯に犯されたらしいが、傷跡はなく暴力は受けなかったようだ。  警察に保護された美幸は、誘拐犯について聞かれたが、誘拐犯はフルフェイスのヘルメットを被りサングラスをしていた為、背格好については言えたが、顔について手掛かりになることは一切言えなかった。尚且つ手袋をしていたらしく指紋も一切残っていなかった。実は誘拐犯はライダーだったのだ。しかしDNA鑑定のことが念頭になかったらしく唾液や精液を残していた。美幸の乳房を嘗め回し一物を膣から抜く際に垂れた為に・・・矢張り誘拐犯は美幸を犯したのだが、まだ未成年で若気の至りか、とんだ落ち度である。従ってDNA鑑定によって洗い出されるのは確実となった。  そうとも知らずに逃走する誘拐犯は名を佐藤と言って犯行中、身代金目的を装っていただけで、その積もりは毛頭なく、そのトリックと警察が来るまでに美幸を犯して逃げ果せられるかどうかのスリルを楽しむことに全精力を注いでいたのだった。        
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