目にもの見せてくれるわっ

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 アサギはロッタを見下ろし、ロッタはアサギを見上げる。  互いに無言で視線を絡め合わせること数秒、最初に口を開いたのはアサギだった。 「俺、結構上手にやれると思うけど」 「だからそういう問題じゃないから」  呆れ口調でロッタは、アサギを止める。  でも内心やれるもんなら、やって欲しいのが本音。暗殺を止めるのは、ひとえにアサギに万が一のことがあったら嫌だから。  ───……この人は、ちっともわかってくれない。  ロッタはアサギのことが好きだ。  でもそれは家族を慕うような気持ちで、かけがえのない存在という意味。  だから爵位を拝辞した時だって、アサギに愚痴ることも頼ることもしなかった。  没落した原因は借金なのだ。お金を無心しているように受け取められたら嫌だし、もし万が一アサギがお金を貸してくれたとしても、援助する、されるという関係にはなりたくなかったから。 「あのさぁ、ロッタ」 「なあに、アサギ」  相変わらず二人の距離は近い。でも、アサギはもう怖い顔をしていないので、ロッタはそばを離れることなく返事をする。  そうすればアサギは「一旦座ろう」と言ってから、本題を切り出した。 「ロッタは勘違いしている」 「おっと、いきなり失礼ね。でも……聞く。続けて」 「ああ、聞く気が無くても、耳にねじ入れるつもりだ。───……物理的な意味じゃないから耳を塞ぐな。で、俺が勘違いしているって言ったのは、な」 「うん」 「ロッタは逃げても逃げなくても、陛下の子供を産んだら殺されるぞ」 「……は?」 「良く考えろ。側室でもない女が生んだ子供を、大々的に世継ぎと公表すると思うか?」 「……!!」  適当に転がっている酒樽に座っていたロッタは、衝撃のあまり後ろにひっくり返りそうになった。  幸いアサギが手を伸ばしてくれたので転倒は免れたが、語られた内容が内容だけに礼を言う余裕は無い。 「もし、子供が生まれなかったら……」 「生まれるまで陛下に抱かれるか、もしくは使えないヤツと判断され、良くて追放。最悪口封じの為に殺されるな」 「つまり」 「ロッタの余命は早くて1,2ヶ月後。遅くて……一年?いや、もっと短いか。まぁ、来年のこの季節には、生きていないな」 「まじですか」 「マジだ」  動揺を極めているロッタに対して、アサギは的確に返答する。容赦無い。  でもアサギとて青ざめるロッタにこんな非道なことを言いたくはない。でも、現状を理解してもらわないといけないのだ。  そして今度こそ、頼ってもらわないといけない。泣き寝入りなどするなら、即刻この場から連れて逃げる所存だ。 「ロッタ、どうしたい?」 「……しばし、お待ちを」  頭を抱えながら捻り出したロッタの要求を、アサギは呑むことにする。  空は相変わらず雲一つ無い、澄み切った青色が広がっていた。
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