えっ、嘘?! そっちなのかぁ

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 ロッタがこれからの計画を2回頭の中でおさらいした頃、国王陛下が護衛騎士を伴って姿を現した。  国王陛下はロッタと同様に寝間着の上にガウンを引っ掛けた恰好で、やる気満々のご様子だ。 「こんばんは。待たせてしまったかな?」 「……」  フランクに話しかけられたところで、発言権許可を得ていないロッタは、”はい”も”いいえ”も答えることができない。 「そっか。急いできたつもりだったんだが……悪かったね」  無言を肯定だと受け止めた国王陛下は、すまなそうに眉を下げた。  すかさず護衛騎士が、やれやれといった感じで横から口を挟む。 「陛下、発言の許可を与えていないのに、勝手に決めつけては可哀想ですよ」 「あっ、そうか。これも悪かったね。えっと……君の名は」 「……ロッタ嬢ですよ、陛下。夜伽相手の名前くらい覚えてあげてください」 「そうだね。これもまた悪かった。ロッタ嬢、どうぞ気を楽に」 「……はい」  テンポの良い会話の中に、気になるところがあるが、一先ずロッタは返事をした。ついでに先ほどの問いに答えることにする。 「あと恐れながら、わたくしは、それほど待ってはおりません」 「そうか。それは安心した。───…… ではガーダ、君は席を外してもらおうか」  ロッタににこりと笑みを向けた後、国王陛下は護衛騎士に少し強い口調で命じた。  護衛騎士ことガーダは、ちらりとロッタに憐れんだ視線を向けると、ザ・騎士的な礼を取り部屋を出て行った。 「では、ロッタ嬢」  視線を一瞬だけ余所に向けていたロッタは、飛び上がらんばかりに驚いた。  超至近距離に国王陛下がいたから。しかも、彼はガウンを半分脱いだ状態だった。 「……へ、陛下……あの」 「うん?」 「わたくし緊張のあまり喉が渇いて……っ!?」  後退りしながら、不能薬が入った水を陛下にも飲まそうと企んだロッタだけれど、それは失敗に終わった。  国王陛下に腕を掴まれてしまったから。 「……ひぃ」  ロッタの口から小さな悲鳴が漏れた。  でも、国王陛下はロッタをベッドに押し倒すことはしない。腕を掴んだまま反対の手で自身のガウンをロッタの肩に羽織らせただけだった。 「怖がらせてすまなかったね。一先ず、そっちに座ろうか」  国王陛下が、ついっと指を差したのはベッドではなく、布張りのソファーセット。今頃気付いたけれど、ローテーブルには果実や軽食まで用意されている。  これは一晩中、がっつりイタすために体力補給の為に用意された食糧なのだろうか。  そして国王陛下はこれを食して、一晩頑張ろうと、遠回しに自分に訴えているのだろうか。  そんなことを考えるロッタの足は、地面に根っこが生えてしまったかのように動かない。  でも国王陛下は、さっさと着席してしまった。 「ロッタ嬢、早くおいで」   国王陛下に命じられてしまえば、ロッタは否とは言えない。いや、そんな権利はもとから無かった。  そんな下々の立場であるロッタは半泣き状態で、ソファへと足を向けた。
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