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九つ下の、弟が生まれた。
日曜日の早朝。泣きだした弟の声に目が覚めたわたしは、ぐずる弟を抱えたお母さんと近所を散歩していた。
清らかに流れる源兵衛川を見下ろしていると、電車の動く音がして視線を上げる。ゴトゴトと鈍い音を立て、駅へと向かっていった。
「夕翔、寝た?」
聞こえ始めた寝息に、わたしは隣を歩くお母さんに小さい声で尋ねる。
「うん、やっと寝てくれた」
笑うお母さんの顔色は、あまり良くない。昨夜もずっと夕翔が泣いていたから、眠れていないのだろう。目の下に出来ている隈が、ありありとそれを物語っていた。
「お母さんはこのまま帰るけど、有海はどうする?」
「もう少し歩いてから帰る」
力なくわたしに尋ねてくるお母さんに、わたしは答えた。
「そっか。じゃあ先に帰っているね。おばあちゃん達は起きているから、帰ったら朝ごはん食べてね」
「うん。お母さんはもう少し寝てね」
ありがとう、と言ったお母さんはそのまま家路へとつく。その背に手を振り、わたしはそのまま歩き出した。
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