源兵衛川のに住まうは

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 わたしは目を見開く。群青色の髪。幾重に着込んだ蒼い着物からのぞく温度のなさそうな白い肌にうっすら浮き上がる青い鱗。魚のヒレのようなものが、耳の辺りから生え出していて、その瞳は深い海の底のような青色をしていた。  なにより驚いたのは、源兵衛川へと下ろしていた足。それは人間のものではなくて、人魚のような足だった。大きな尾ヒレで、その流れに波紋を起こす。  「あなたは・・?」  恐る恐る尋ねる。そんなわたしを気にする風でもなく、その人魚は綺麗な笑みを浮かべた。  「お前は運がいいな。私の姿が見られるなんぞ、なかなかないぞ」  見た目のわりに、古くさいしゃべり方をする。私はゆっくりと近づいて行くと、その姿を見つめた。  「・・ずいぶんと、人に助けられた。以前はこの姿かたちも保てなかった」  ここではない遠くを見るような目。  わたしは黙ってその話を聞いていた。  「私のような奴らは皆人を好んじゃいないが、私は別だ」  だから、とつづける。  「特別に教えてあげよう。お前は本当に運がいい」  人魚は、その身体をわたしに寄せて、耳打ちした。聞こえたその言葉は、どうも聞き慣れない言葉で、難解なものだった。  「・・ごめんなさい、難しくてよくわからなかったです」
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