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さきほどの人魚は、川の主だったのだと聞いて納得した。人と異なる外見に、ちょっと変わった喋り方。そして、不可解に感じていた言葉にも合点がいく。
「川の主さんは、なんて言ってたんだい?」
顔をあげておばあちゃんを見る。わたしはゆっくり、川の主の言葉を復唱した。
「人に、助けられたって。それで、わたしは運がいい、とも言われた。あと、水の記憶の話もしたし…」
それから。
わたしはその言葉を大切に抱きしめて告げる。
「またいつでも、帰ってくるといい、って」
わたしは自分でも分かるくらいに、声色が明るかった。
あのときの、川の主の手の感触がよみがえる。その感覚を忘れたくなくて、自分の頭の上に、その手を乗せた。わたしの手は、川の主のものよりも小さかった。
おばあちゃんは嬉しそうにわたしを見つめている。
「三島の子供たちはね、みんな源兵衛川の主さんと会うと、この地へ戻ってくるんだよ」
おばあちゃんの言葉に、わたしは瞬きを繰り返す。
「みんな、川の主さんが好きで、このまちが好きなのさ」
おばあちゃんの言葉に、わたしは高揚する気持ちを抑えられない。
「・・もしかして」
「そうさ。有海のお母さんも、おばあちゃんも。川の主さんと会ってるんだよ」
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