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黒いゴミ
扉の先には同じようで同じではない景色が広がっていた。
まず同じなのは砂浜が白く平らにあると言う事。また、青色の海が潮騒を奏でていると言う事。
同じではないのは、幾人ものワタシが居た事。
一人は喜びの歌を歌いながら。
一人は怒りに叫びながら。
一人は哀しみに膝を折りながら。
一人は楽し気にスキップをしながら。
皆、思い思いに海の向こうに向かって投げていた。
白い塊を。
ぽちゃんと言う音が潮騒に飲み込まれ、それはふよふよと浮きながら沖へ沖へと流れて行く。
もしかするとあの黒いゴミは、この白い塊の成れの果てなのか。キミは瞬時にそう解釈した。
で、あるとするならば、このワタシ達はずっとずっと昔から、キミが夜の寒さに凍えないように、一人一人の感情はどうあれ、投げ続けていたと言う事になる。
あの橙色の暖かい炎を作る為の、燃料と成り得る何かを。
キミは砂浜に転がった白い塊を拾い上げた。
キミは渇望した。
あそこで暮らすワタシの安寧を。
ワタシが凍えてしまわぬように、海の向こう側に届きますようにと願った。
キミは大きく助走をつけて思い切り白い塊を海へと投げた。
――キミはワタシになった。
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