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キミ
――ワタシはキミになった。
キミは今日もゴミを拾う。
砂浜でゴミを拾う。
キミが歩き続ける砂浜は肌理細やかなシルクのように白く平らで美しい。
燦々と照らす太陽の優しい暖かさを感じながら、一定間隔で打ち寄せるなだらかな潮騒を聴きながら、只々黙々と拾い続ける。
そのゴミは硬く黒く、柔らかい白い砂浜の上ではとても目立っていて、まったく見落とす気配がないのだった。
キミは火ばさみで攫んだゴミを背負っているゴミ籠に入れていく。
どうやらゴミは海の向こう側からぷかぷかと波に乗ってやってくるようで、キミが拾ったそばから流れ着いてはまた白浜にころりと転がっている。拾い続けたらきりはないが、埒が明かないわけではない。キミはいつも通りの道順で拾い終えると、ふうっと短く溜め息をついた。
誰も見ていない所なので、周りを気にせずもっと大きく達成感を膨らませて吐き出してみても良いのだが、しかしながらそれは寧ろ己に向かってのものであるからこその慎ましさのようでもあった。
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