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キミはワタシをずるずると引きずってベッドまで運ぶと、再度呼びかける。
「何とか一度起きてください。このベッドで寝てください」
「ああ。ああ? 嗚呼……、ありがとう。しかしキミはどうするのか」
言いながらも舟を漕いでいる。
「そうですね。ええ。困りました。確かに困っています。毛布を一枚床にでも敷いて何とかしようとしていましたが、これほど暖まらないとは思わなくて。あの、外套を貸して頂けますか?」
「ああ。ああ? 嗚呼……、包まって眠るのなら、それはワタシの役目ではないかい?」
「いえ、包まって眠ってしまっては凍えてしまいます」
「なら出掛けるのかい?」
「ええ。お疲れのようですので。このままここにいると凍えてしまいそうですし、あの外套はとても暖かそうだから、歩いていれば温かくなるかも知れません」
「そうかい。外套は構わないよ。それよりありがとう。ベッドを譲ってくれて」
「いいえ。今にも寝てしまいそうですから。どうぞおやすみください」
「おやすみ」
言うが早いか、ワタシはすうすうと寝息を立てていた。
キミは外套を着て外に出た。
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