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夜間歩行
しかし時間はキミが思っていたよりも早く流れていた。
軋むほどに敷き詰められていた星々も徐々にその数を減らし、キミと世界を照らしていた月も薄ら笑いを浮かべている。
空の透明度が増す。
同時に茜色が雲を染め上げる。
太陽が昇ってきたようだ。
夜通し歩き続けていたという事実に直面し、キミは流石に疲れたのか、その場に座り込んだ。
海の方を、何とは無しに眺めた。
とろとろと蕩けそうな陽炎を身に纏い浮上してくる太陽は、キミに健やかなる生命の活動を余儀なくする為の熱を与えた。
暫く、ぼっと、のっそりと昇る太陽を見ていたが、ふと我に返ったように起き上がる。
「どうして!?」
キミが叫んだのは、太陽が海の方角から昇ってきた事への驚愕からくるものであった。
キミはいつも太陽が沈んで行った海の青白い光を見て眠りに就くと言うのだから全く矛盾しているのだ。
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