暖炉

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暖炉

 キミは部屋の中に入ると暖炉(だんろ)の前に座った。それは煉瓦(れんが)造りのもので、外から見えた煙突はここに繋がっている。暖炉は(すす)けているが、灰などの燃えカスは存在しない。  キミは今日拾ったゴミを籠から取り出し暖炉にくべた。  黒いゴミ。キミが砂浜で拾うゴミは全て水を嫌い火を好む。  そう言う特性があるおかげで(だん)を取るには最適な燃料だと言えた。  火をつけるともくもくと煙を上げた。  キミは心底安らいだようにゆっくりと息を吐き、火に当たる。  (しばら)くの間体がぽかぽかになるまで温め続ける。日が暮れてから(にわ)かに吹き始める冷酷な風は、いつもキミの体温を奪っていく。であれば早々に撤収をすれば良いのだが、しかしながらキミは日が暮れるまでゴミを集め続けなければいけなかった。なぜならこのゴミはとても燃えやすいけれども、すぐに燃え尽きてしまうから。だからこの部屋を暖めるのに十分な量を取るとなると、日が暮れるまで拾い続けるしかないのだ。  キミは暖炉の前で少しくつろいだ後、スープを作ってそれを飲んだ。  嚥下(えんか)した瞬間に(ほとばし)るヒリついた熱は、咽喉(のど)に少しの後遺症も残さずに過ぎ去ってお腹を温めた。
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